当院でのアブレーションの管理についてまとめてみようと思いました。(完全に自己満足ですが)
何かのヒントになれば幸いです。
1. 心房細動 (AF) の概要と病態進行
– **特徴**: 左心房の肺静脈から発生する異常な電気的興奮が原因。
– **心電図所見**: f波、RR不整。
– **性別・発症頻度**: 圧倒的に男性に多い。
– **進行性**: 発作性 (PAF) → 持続性 (PeAF) → 慢性 (CAF)。
– **PAFの治療重要性**: 初回PAFの5年後、30%が慢性化。早期治療が最善。
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### 2. カテーテルアブレーション治療の詳細
– **適応疾患**:
– 発作性上室性頻拍、心房粗動、心房頻拍、心房細動(AF)。
– 患者の症状や内服治療効果、全身状態により判断。
– **アブレーション手技**:
– **原理**: 30〜50Wの高周波で心筋を焼灼(50℃)→蛋白凝固により電気刺激の伝達を遮断。
– **治療効果**: 肺静脈隔離術により、AFの元となる90%の異常興奮を遮断。
– **手技詳細**: 左房の肺静脈を囲むように高周波を通電し、心房細動の引き金となる異常電気興奮を遮断する。
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### 3. 術後管理の詳細
#### 3.1 血圧管理
– **目標値**: 血圧80mmHg以下を管理。
– **原因**:
– 過鎮静による血圧低下→輸液増量、DOA使用。
– **心タンポナーデ**: カテコラミン使用でも血圧が回復しない場合、心エコーで確認し、心嚢ドレナージを実施。必要に応じて開胸止血術。
#### 3.2 SpO2管理
– **目標値**: SpO2 93%以上。
– **原因**:
– 過鎮静による呼吸抑制→酸素投与、NPPV。
– 翌朝までに過輸液負荷や肺鬱血が発生する場合は利尿剤投与。
#### 3.3 心拍数管理
– **原因**: アブレーションで副交感神経が除神経され、平均10〜20回/分心拍数が増加することがある。
– **早期再発**: 焼灼後48時間で炎症がピーク→PACで再発することが30%の確率で起こるため、再発時はβブロッカー使用。
#### 3.4 体重・水分管理
– **異常増加**: 術後2kg以上の体重増加は異常→フロセミド静注で水分管理。
– **急性胃拡張**: 食道周囲の焼灼により内臓神経が損傷することがある→絶食・点滴対応(プリンペラン、エリスロマイシン投与)。
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### 4. 術後の自覚症状と対応
– **心タンポナーデ**: ショック状態(呼吸困難、意識障害、血圧低下、チアノーゼ)。
– **呼吸困難・息切れ**: 心膜炎、胸膜炎、右気胸、右横隔膜神経麻痺などの可能性→レントゲン確認。
– **動悸**: PACによる短期再発は炎症消退後に改善→1ヶ月以内にβブロッカー使用で対処。
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### 5. 退院後の患者指導
– **労作時呼吸困難**: ブロッケンブローによる左右シャントが原因→3〜6ヶ月で自然治癒。
– **頻脈**: アブレーション後の自然経過として頻脈が続くことがある→自然治癒することが多いが、強い場合は受診してβブロッカーを処方。
– **鼠蹊部痛**: 仮性動脈瘤の可能性→激痛がある場合は早急に受診。
– **食欲低下・体重減少**: 退院後半年ほど続くことがあるが、経過観察で問題ない場合が多い。
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### 6. 入院時および術後の詳細管理
#### 6.1 持参薬と休薬
– **原則**: 入院後も持参薬を内服続行。ただし、外来で休薬指示が出ている薬は除く。
– **休薬ルール**:
– 抗血小板薬は2週間前、抗不整脈薬は3日前から休薬(アミオダロンは例外)。
– 入院前にTEE(経食道心エコー)は基本実施せず、造影CTで左心耳血栓を確認。
#### 6.2 術前・術中の管理
– **術前**: 1日目22時以降絶食。当日朝はセルシン10mg服用でディープセデーション。
– **術中**: 経鼻エアウェイ挿入→術後帰室時に抜去。
#### 6.3 帰室後管理
– **Vital sign**: 1PODまで2時間ごとに確認、安定後は4〜6時間ごと。
– **水分摂取**: 帰室後2時間後に覚醒していれば飲水テスト実施。OKなら食事許可。
– **完全安静**: 8時間後に体位変換可、食事時は45°ギャッチアップ可。
#### 6.4 1PODの対応
– **12誘導心電図**: 7時までにPACSに取り込み、医師が来棟したら抜糸。
– **足踏みテスト**: PE(肺塞栓)有無をチェック。
– **レントゲン・体重測定**: 車椅子で安全に実施。
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### 7. 術後合併症の管理と予防
– **心タンポナーデ・出血**: 帰室後は大腿周囲径の左右差を観察し、圧迫止血の必要性を確認。
– **SpO2低下**: 93%以上を目標に酸素を調整。
– **PE予防**: DVTによるPEをフットポンプとDOACで予防。フットポンプ使用と定期的な右房エコーでチェック。
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