看護師の後輩指導について考える機会が最近増えてきた気がする。どんなセミナーや参考文献を読んでも「コーチング」が紹介されている。そこで私なりにコーチングの講義で理解した内容を後輩に試してみての結果を書いていこうと思う。
コーチングは問いを投げかけ、相手が自発的に前進できるようにサポートする。サポートされた側は行動に対して「意味付け」を行い、他人による指示よりも現実化する可能性が高いと言われている。
5年くらい前ならこの方法でも十分に後輩は育ったと思う。しかし、Z世代に対してはこの限りではないと思っている。今のZ世代は圧倒的に「承認されたい」と思っているような気がする。ただ声をかけて進捗状況や報告を待つだけではなく、何気ないやりとりも含めて「私はあなたの存在をそこに認めている」ということを伝えてほしいのではないだろうか。要するに「かまってちゃん」が増えてきているようだ。この「かまってちゃん」現象はただ「素晴らしい」と褒めるだけでは満足しない。あくまで相手が心の奥で欲している言葉を選んで投げかけてあげなければならない。もはや「褒める」という行為自体が技術なのだろう。相手をよく観察し、どういった評価が欲しいのかを熟慮することで、本当に欲している言葉の投げかけができるようになるい。これには一種の慣れが必要なのだ。全く贅沢な世の中になったものだと我ながら思うが致し方ない。
仕事の内容についても「信じて任せる」ことが求められる。患者の命に直結する看護師の仕事で任せることを実践するのはかなりギャンブルのようなものだと思う。そしてついつい口を出してしまったりするのだが、それを聞いただけで後輩のモチベーションはダダ下がりとなり、先輩に対する信頼をなくしてしまうことにつながってしまうように感じる。丸投げすることは絶対にできない。だから私たちは後輩に何を任せられるかを真剣に考え、後輩の成長に大いに役立つものと見極めた上で仕事を与える必要があるのだ。ちょっと昔のトレンディドラマのような「頼んだぞ」と言い切ることも必要なのだ。
そして今の後輩たちに「叱る」ことは必要なことなのだが、その方法については時代が移ろうことに伴って変化している。もちろん「相手の成長のため」と思ってネガティブなことを言うのだが、Z世代のメンタルは思っているよりもずっと豆腐メンタルなのだ。叱った翌日「仕事に来るのが嫌になって来なくなる」と言う最悪の困った状況になりかねない。これまでの後輩の態度を見ていると「少しでも自分の感情が入った」叱責は心に響かないということだ。
結局のところZ世代の後輩たちには「何度も経験させて慣れた仕事から任せる」ことがベストな指導なのではないだろうか。最初の頃は「任せてはいないから何度も意見をして軌道修正を行う」ことが求められる。その後慣れてきた頃に後輩ならではの工夫ができるように促して自信がついてきた頃合いを見計らって「仕事を任せる」のである。そしてトドメの最終兵器が「この部分がすごく良かった」と具体的な行動を観察して褒める。この一連のコーチングスキルを総導入してやっと後輩の心に響く指導ができるようになるのではないかと思った。